<キャスト>
影山伯爵
日下 武史 華族/写真師/給仕/職人 太田 泰信 木村 雅彦
影山夫人 朝子
野村 玲子
岡崎 克哉 青羽 剛
大徳寺夫人 季子 末次 美沙緒 岡本 繁治 華族 服部 良子
その娘 岡本 結花
森田 利夫 藤井 智子
清原永之輔 広瀬 明雄
吉谷 昭雄 岡本 和子
その息 久雄 田邉 真也
田島 雅彦 大西 利江子
飛田天骨
田代 隆秀
佐藤 晃仁 林 浩代
女中頭 草乃 中野 今日子 田島 康成 深沢 未可子
宮村夫人 則子
木村 不時子 青木 朗
坂崎夫人 定子
大橋 伸予
笠嶋 俊秀
<ストーリー>
第一幕
影山伯爵邸の離れの前庭に、女中頭草乃に案内された女客たちが集まってきた。その内の一人、大徳寺侯爵夫人季子には目的があった。
そこへ影山伯爵夫人朝子が現れる。一同が洋装の中、かつて芸者だった朝子は和装である。
人払いした朝子に季子は相談を持ち出す。娘の顕子の恋の成就させてほしいというのである。
相手というのは自由党の残党の一人だという。その男の名は久雄、父親は反政府リーダーの清原永之輔と聞いて、朝子は愕然とする。
二十年前、朝子は清原と深く愛し合い、その間の子が久雄なのであった。
しかも、今夜鹿鳴館で開かれる影山主催の夜会を自由党の壮士が乱入して、久雄が影山暗殺を目論んでいるという。
それを取りやめ、顕子との恋路を開くよう久雄を説得して欲しいと頼まれた朝子は、久方ぶりに我が子と対面する。
久雄は目の前にいる女が母だとは知らずに、捨てた母への恨み言と父への屈折した感情を吐露する。
堪えきれなくなった朝子は、親子の名乗りをあげ、今でも清原を慕っていると告げる。意を決した久雄は朝子に打ち明ける。
「今夜、僕が殺そうとしているのは、僕の父なんです」
その日の午後、草乃の手引きで清原が影山邸に訪れる。朝子が呼んだのである。
朝子は清原に今夜の自由党壮士乱入を取りやめて欲しいと切り出す。
かつて愛した女ながら今や政敵の妻の座にいる朝子に、清原は一度決めたことは曲げられないと固辞する。
そこで朝子は、これまで公の席に姿を見せず和装で通してきた掟を破り、今夜鹿鳴館の夜会に出席すると告げる。
ついに清原は折れ、計画を取りやめると約束した。
清原が帰った後、影山が腹心の部下の飛田を連れて帰宅する。朝子は草乃と共に木陰に身を隠し、二人の密談に耳を傾ける。
何と、久雄に清原暗殺の筋たてを仕組んだのは影山であった。政敵を葬るのに家庭問題をカムフラージュにしようとしたのである。
それを聞いた朝子は飛び出し、影山に告げる。
「今夜私は夜会に出ます。そして壮士の乱入はございません」
これを不審に思った影山は、朝子が退席した隙に草乃に全て吐くよう迫る。
第二幕
夕暮れ時の鹿鳴館。そこには既に久雄と顕子、朝子と季子が来ていた。全てが上手くいく自信が朝子にはあった。
しかし四人が夜会の準備に明け暮れている間に、草乃から全てを聞いた影山が現れる。
影山は再び策略を巡らし、飛田の部下に自由党のふりをして乱入させるように、草乃に清原を呼ぶように命じる。そして久雄をそそのかして銃を渡す。
やがて夜会が始まり、客たちがダンスホールに集まり、舞踏が始まる。
そこへ自由党の壮士が乱入したという知らせが朝子の耳に入る。混乱する朝子であるが、身を挺して乱入を防ごうと奮闘する。
影山の仕組んだ罠だとは気づかず、久雄は銃を片手に、外へいるはずの清原のもとへと駆けていく。
壮士たちを何とか追い払った朝子。しかし、久雄の姿がない。必死に名を呼ぶ朝子だが、そこへ二発の銃声。
清原が撃たれたと、朝子は悲嘆に暮れて崩れ落ちる。
しかし、鹿鳴館に戻ってきたのは久雄ではなく、清原であった。そして、「久雄は死んだ」と告げる。
朝子は清原が久雄を殺したと思い、清原を罵る。
だが、清原はさらに言葉を続ける。
久雄はわざと銃を外し、父である清原に殺されるように仕組んだと。
愛をもらえなかった代わりに父の手で殺されたかった、そして父の記憶に永久に自分の事と罪の意識が残るようにと。久雄は清原に対する最高の復讐を遂げたのであった。
もう、清原には政治どころか生きることに対してすら気力が残ってなかった。
最後に「あの若者は自由党ではない。影山の部下だ」とだけ残し、呼び止める朝子の声も聞かず、清原は静かに去っていく。
影山は飛田を退出させ、二人きりとなった朝子に言う。「全てお前の為にやったのだ」と。
全ては影山の朝子に対する執着と嫉妬からきたのであった。
だが、朝子は影山に「あなたが”愛情”だの”人間”だの言うと汚らわしくなる」と冷たく言い、今夜限りで暇することを告げる。
しかし、まだ夜会は終わらない。夜会はそつなく終わらせなければならない。
冷え切った二人は腕を組み、ダンスホールへ赴こうとする。
そこへ銃声とも何ともつかぬ音が。
「ピストルの音が」と動揺する朝子に、影山は言う。
「耳のせいだよ。それとも花火だ。そうだ。打ち上げた損ねたお祝いの花火だ」
そして幕が下りる。
中二の時に見た「ハムレット」以来のストレートプレイですよ。原作はご存知の方も多いでしょう。三島由紀夫の「鹿鳴館」です。
三島由紀夫の文章があまり肌に合わないので、話を楽しむというより衣装や舞台美術を観にいくという感覚で行ったのですが、この作品は大丈夫でした。
ただ、途中で寝かけてしまいましたが(苦笑)
あらすじを文字で書いちゃうといわばドロドロの親子愛憎劇+嫉妬+政治の物語で、ヘタするとものすごくチープになりかねませんが、言葉が綺麗で話し全体が締まってました。
周到に練られた感じです。ただ、ざる頭の茶釜にはついていくのに精一杯だったという点もありますが;
でも、日本史を受験の時にやってて良かったって思いました(笑)小ネタが分かると楽しいです。
日下さんは、やはりベテランなだけあって舞台に立つだけで雰囲気がピリッとしますね。この方の「や〜れやれ」の言い方が好きです
野村さんは美しいですねぇ。見た目だけでなく、言葉の言い方も美しかったです。初登場時、声が少々枯れて聞こえたので「おや?」と思ったのですが、話が進むにつれてどんどん純度が上がってきてる感じでした。
末次さんは声が素敵なんですよねぇ。四季って独特の発声法を使っているので、声が通っている人がセリフを言うと時々ウソっぽく感じてしまうのですが、末次さんのように声に包容力ある人だとすごくいいですねぇ。
岡本さんは初めて見ました。まだ新人さんのようですが、淑やかで少し内気な感じがお嬢様らしくて良かったです。でも、個人的には濱田さんの変身っぷりが見てみたかったです。
広瀬さんは「夢醒め」の部長のイメージがものすごく強いですが、今回の理想に殉じようと生きる清原役、ダンディーでした。
田邉さんは生では初めて見たのですが、影のあるナイーブな茶釜好み(笑)役でした。個人的に夜会服の時より、絣に袴姿の方が素敵です。
飛田はものすごく危険なかほり漂う役です。人殺しても何とも思わないような。その危うさをよく表していたのではないかと思います。田代さんは。
彼が「血」という言葉を発するだけでゾクゾクっとします。まぁ、伯爵と天骨の会話の場面で茶釜は眠気と闘ってたわけですが(苦笑)
あぁ、それにしてもこの戯曲の話の精度や言葉の煌きは言葉では表現できません。
茶釜は一番最後の幕切れが好きです。一体誰が撃たれたのか?誰が撃ったのか?そもそも本当に銃声なのか?
こういう余韻のある終わり方、いいですね。
でも、やはり私は衣装と舞台美術にほれぼれしながら見とれてましたvv
いや〜。衣装美しい!個人的には鹿鳴館での夜会シーンの衣装よりも、一幕での衣装の方がどの人も好きです。
輸入ミュージカルでドレスというものを着る作品はたくさんあるわけですが、この「鹿鳴館」は違うんですよね〜。
本当に、明治の人間が頑張って背伸びして洋装になじもうとしている感じが伝わってきて。
輸入ミュージカルよりもドレス姿が様になってて、同時にどこかぎこちなさが残ってるといいましょうか?
美術もよかったですねぇ。花も綺麗でしたし。
そして、何よりの収穫は劇場そのものでした。
初めて四季の「自由劇場」には行ったのですが、シックで重厚な雰囲気が素敵でした。
ハコそのものが小さいので、3150円だったのに舞台がすごく近くてかなりお得な気分v
ここで何かミュージカル見たいなぁ。そしたらすごいんだろうなぁ。
次に見る舞台は、7月の「ブラックコメディ」の予定です。また自由劇場です。
次はコメディーなので、肩の力抜いて見られたらな〜と思います。
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