一年は52万5600分ある。それは何を基準で計れるか?私たちは愛で計りたい……。
一日、一分一瞬を精一杯生き抜きたい。明日も過去も無い。あるのは今日だけなんだから。
これがトニー賞のみならずピューリツァー賞を受賞したミュージカル「RENT」のテーマです。
本当に良かったです。プロイデューサーズよりも個人的にこちらのほうが好きです。
それ以上に今まで見てきた映画たちの中で5本指に入るくらい良かったと心から思います。
さて、これより下からネタばれ満載の長〜い長〜い感想いきたいと思いま〜す。
舞台は、80年代後半から90年代初頭にかけての荒んだNYのイーストビレッジです。
自身を芸術家と称する8人の若者たちの痛々しくも瑞々しい群像劇です。
8人の主要登場人物の簡単な紹介をいきたいと思います。
マーク:映像作家を目指している。元恋人モーリーンを女性であるジョアンヌに取られて胸中はかなり複雑。
ロジャー:以前は人気バンドのボーカルだったが、恋人がHIVを苦に自殺し、自らもHIVに侵されて以来ひきこもり気味になっているマークのルームメイト。
ミミ:まだ19歳のSMダンサー。ヤク中でHIV患者。ロジャーに惹かれる。
トム:マーク&ロジャーの親友。二人の家を訪ねる途中で強盗に襲われるが、エンジェルに救われて恋に落ちる。彼もHIV。
エンジェル:女装のゲイ。でも心はまさに天使のように清らかで寛容。しかし、エイズが彼を蝕んでいく。
モーリーン:マークの元恋人。ジョアンヌという新たな恋人が出来ても他人を誘惑し続けるという小悪魔的な性格。
ジョアンヌ:弁護士。マークとは恋敵という間柄なはずが、モーリーンの身勝手な行動への憤りからマークと意気投合する。
ベニー:もとはマークたちの仲間だったが、資産家の娘と結婚して以来マークたちの住む地域を再開発しようとして対立。ミミと昔付き合っていた。
何て言ったらいいんでしょうか……。とにかく心に重くのしかかる映画でした。
まずはオープニング。上の8人が倉庫のような場所に一列に並び「SEASONS OF LOVE」というRENTのテーマを歌うのですが、
しょっぱなからもう震えっぱなしでした。
ミミとジョアンヌ以外は舞台オリジナルキャストなだけであって本当に実力がありました。舞台は本当にすごかったんだろうなぁ。
そして次の「RENT」。この曲も勢いがあって大好きです。
RENTというのは家賃という意味で、「去年の家賃すら払えない。払うあてがない。だが払ってたまるか。夢のためだ」という趣旨で歌われてます。
安アパートに住む貧乏芸術家たちが「立ち退き命令」のビラを燃やしながら「払ってたまるか」と叫ぶ画は本当にダイナミックでした。
続いて”裏切り者”ベニーの歌が入るのですが、一つ一つの歌を追っていくとものすごい長さになりそうなので割愛。ごめん。
さて、次は死ぬ前に永遠に残る曲を書きたいというロジャーの叫びを表した「ONE SONG GLORY」
彼の叫びは本当に切実でした。
何かを成し遂げたいけど、自分の情熱はHIVによって壊されてなくなってしまった。と諦観する彼の姿は哀しかったです。
彼の心の持ちようは少しヴィンに通じるものがあると思います。
次はロジャーに興味を抱いた階下のミミが、ロジャーの家にまで「ロウソクに火をつけて」という口実でやってくる「LIGHT MY CANDLE」
コミカルなんだけど、緊張感の漂う二人のデュエット。
同時にドラッグに頼り、結果HIVに感染してしまうがどうにも自分では抑えられないという痛々しさも出ていました。
80年代後半〜90年代前半は本当に荒んでたらしいですね。ジュリアード市長に代わった今は大分改善されたらしいですが。
続いてはエンジェルの登場!!
彼、否彼女は本当に可愛いです!お互い助けあいましょうと歌い踊る彼女は本当に愛しいです。
友達かお姉さんに欲しい〜!!
続いてマークとジョアンヌが、小悪魔モーリーンにうんざりしながらも惹かれてしまうという趣旨のタンゴ(!)を歌います。
マーク役の人、何気に声がハスキーです。顔つきとしてはのび太くん系なのに(笑)
そして、HIV感染した患者の人が互いに励ましあう会が出てきます。
ここで歌われる歌は本当に感動的でした。
「後悔していたら人生を取り逃がしてしまう。今日しかないのだから」
死がすぐ近くまで忍び寄ってることが分かってる人たちだからこそ、余計に心に響きました。
次にSMクラブで働くミミの歌と、そのミミの愛をどうしても拒絶してしまうロジャーの歌が入ります。
彼は何故そこまでミミの愛を拒むのか?その理由は後でロジャー自身から語られるのでここでは伏せときます。
ロジャーに拒絶されたミミは、彼の口調と表情から本心ではないと分かる。
ここで泣かせられるのは、ミミがロジャーの心をほぐそうとして歌うのが、先ほどHIV患者たちが手をつなぎながら歌った曲↑なんですよ!
くぅ〜!!!こういうのに弱いんです!
そして、トムがNYじゃなくニューメキシコ州のサンタフェでレストランを開きたいという夢を歌ったあと、エンジェルとトムのデュエットが入ります。
これもまたいいんですよ!
「家賃はいらない。千回のキスをくれればいい。ただあなたを守りたい」なんて!
エンジェル!あんたはなんて立派な女なんだ!!
次は、アパート立ち退きの抗議のためにモーリーンが抗議ライブを開くのですが、ここはあまり面白くない(爆)ので割愛。
続いては、ベニーから「芸術家は死んだ」と皮肉を言われたマークたちが「自分たちは芸術家だ」と皮肉たっぷりに主張する歌「LA VIE BOHEM」
有名な話ですが、RENTはプッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」が基となっています。
多分意味はイタリア語で「ボヘミアン」だと思うのですが……。間違ってたらすみません。
つまりこの曲の題名は元ネタと掛けながら、「ビバ!ボヘミアン!!」と表現しているということですね!
あのドンちゃん騒ぎっぷりが大好きです。
ここでロジャーとミミが騒ぎから離れて二人だけで話します。
ロジャーは何故ミミを拒絶したのか?
前述のとおり、彼は恋人がHIVを苦に自殺+自身もHIVでいつ死ぬか分からない。その事が彼を恋まで踏み出させなかったのです。
しかし、ここでミミがロジャーに初めて自分もHIVであると明かします。
だからロジャーの苦しみは分かち合えるし支えられるとミミは言います。
この場面で流れる「I SHOULD TELL YOU」は切ないです。
二人の心は徐々に通い合うのですが、二人とも超がつくほど自分の気持ちを正直に口に出すのが苦手。
ひたすら「言わなきゃいけない」とつぶやき続ける二人がいじらしいです。
二人が騒ぎに戻った後、再び「LA VIE BOHEM」が流れ出します。この青春の勢いに任せた疾走感がすがすがしくも危ういです。
この後、モーリーンとジョアンヌが婚約するものの喧嘩別れするシーンがあるのですが、ここも割愛。
その後に、ロジャーやミミも「HIVに立ち向かう会」に出席しだすようになります。が、ここからどんどん苦しくなってきます。
まず、順調に見えたミミとロジャーの間に、ミミの元彼のベニーが介入する事で亀裂が入ってしまった。
そして「HIVと闘う会」の参加者がどんどん減っていくんです。つまり、みんなどんどん星に還ってしまったということ。
更に、とうとうエンジェルが病に倒れ、星に還ってしまいます。
辛い……!本当に辛く悲しいです。
特にエンジェルが……!!んぬあー!!!(滝涙)
これら一連の顛末がミミとロジャーの歌に乗せられてつづられていきます。
この歌も泣かせます。「WITHOUT YOU」という歌です。
「あなたなしで季節は変わっていくけれど、私の心は重く沈んでいく」ってな具合で。
もどかしい!!!さっさとより戻してくれぇ!!!と滂沱の涙。
続いてはエンジェルの葬式のシーン。
ここがやばかったです!!ハンカチ必須ですよ!
トムが、エンジェルが以前彼に「あなたを守りたい」と歌った歌をリプライズで歌うんですよ!
きたきたきたぁぁぁ!!!泣けます。本当に涙だばだばですよ!!
その曲だけで泣けるのに、更に参列者全員がトムの歌に「SEASONS OF LOVE」を重ねるんです!!
もうダメです。完全にノックアウト。
その後の埋葬シーンにて。
エンジェルはみんなの潤滑油の役割を果たしていたのか、全員がギスギスし出してしまいます。
とうとうマークはあれほど嫌がっていたバラエティ番組の映像編集者となり、ロジャーはサンタフェへ旅立ってしまいます。
だが、これで彼らは終わらない!!彼らは一度は夢を追うことを諦めてしまいますが、もう一度自分を奮起させます。
その時の歌が、茶釜の中で1,2を争うくらいの好き歌です。ロジャーとマークが歌う「WHAT YOU OWN」です。
実はこの歌、茶釜が中学三年のとき、部活で使った歌なんです。なので思い入れが一入なのです。
あの頃は本当に部活が嫌で嫌で仕方なかったけど、この曲だけは大好きで、でも出元がどこか全く分からなかった。
やっと再会できた気分です。って!茶釜のことはどうでもいいんです!
映画を作ると決意を新たにしたマークとNYに戻ってきたロジャー。二人の再会で終わるかと思いきや、続きます。
今度は何と、ミミが行方をくらましたという連絡が。
探しても探しても見つからない。
やっと探し当てたときには、既に虫の息となっていたのです。
瀕死のミミとロジャーのデュエット。ここでもハンカチのご準備をば。
曲は二人が始めて心を通い合わせたあの「I SHOULD TELL YOU」を使ってます。
死の間際になってやっと二人は自分の気持ちに正直になり、初めてミミはロジャーに「I LOVE YOU」を言い、ロジャーはミミに自分の歌を聞かせるんです。
くぅぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!涙で画面が見えません!!!!
ロジャーの腕に抱かれながら、ミミは静かに息を引き取っていきます……。
……と思いきや息を吹き返した!!!
この展開、いつもの茶釜なら「都合が良すぎる!!」なんて言って涙も引っ込むところですが、それまでの曲といい話といい素晴らしかったんで目をつぶることにしました(笑)
奇跡の回復を遂げたミミ。その理由は「エンジェルが戻れと諭してくれた」とのこと。
エンジェル!!あんたは最後までいい女なのね!!!もう大好きです。エンジェル。
そしてマーク・ロジャー・ミミ・トム・モーリーン・ジョアンヌの6人は、マークの撮ったドキュメンタリー映像を見ながら「NOT DAY BUT TODAY」を高らかに歌い、ここで映画は終わります。
あらすじ長っ!ここから更に茶釜の感想入ります。
本当に考えさせられました。自分自身のことを。
RENTに出てくる人の大半は、夢のために自分を追い込んでぼろぼろになり、それでも追うことをやめない。いわゆる真の芸術家と言える人たちです。
それを見て自分は何て甘えた状況にいるのだろうと情けなくなりました。正直。
そもそも世界が違うのは十分承知ですが、突き進む彼らの姿は本当に眩しかったです。眩しすぎます。
いつから夢を公然と口にしなくなったのだろうか?夢を追うことをためらうようになったのか?
この映画は、そのような自分を恥ずかしく思わせると同時に、もう一度燃えていた時を思い出させてくれる映画だと思います。
夢を現実にしようと努力されている方、現実にすることに躊躇している方、夢を忘れてしまった方……。
全ての人に見て欲しい映画です。
最後に小ネタを一つ。
このRENTの脚本・作曲・作詞を担当したジョナサン・ラーソンは、ずっとレストランでバイトをしながらミュージカルを作ることを夢見ていた人でした。
RENTの登場人物のように。
やっとオフ・ブロードウェイ上演にこぎつけたものの、彼はプレビュー前日に大動脈瘤で死去してしまったそうです。
ありがとう、ジョナサン・ラーソン。あなたがいなければRENTは存在しなかった。
この映画は自分の中で大切にしていきたいと思います。
異常に長い感想で申し訳ありません。ゆっくり目を休めてください。
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