リバティーン


 愛するジョニー・デップの最新作!初日に見てきました。

 いや〜。色々すごかったです……。何がって?色々ですよ。えぇ。色々……。

 あらすじとしては、17世紀後半に実際に生きた詩人のロチェスター伯爵ジョン・ウィルモット卿の、酒と芝居と女に溺れた短い人生をつづったものとなります。

 決して娯楽作品ではないので素直に「楽しめた!!」とは言えないのですが、それでもずしっとくるものがありました。

 冒頭、どこにいるかはわからないものの、伯爵の顔が現れて語り始めます。曰く「私を決して好きになるな。その理由を見ていれば分かる」というもの。

 その次の場面から本編は始まります。

 舞台は退廃の限りを尽くしたロンドン。台詞といい映像といいかなり過激です。R-15指定されてましたが、茶釜的見解としては限りなく18禁よりのR-15ですね(笑)

 でも、誰に対しても発破をかけて神経さかなでするようなことしか言えない伯爵の姿はむしろかっこよかったです。

 要は王にだろうが妻(誘拐がきっかけというすごい夫婦です)にだろうが真実を口にしているということですからね。中々できませんね。したくもないですが(苦笑)

 そんなある時、伯爵は芝居小屋で一人の大根女優を見初めます。

 彼女に精神的に何か惹かれるものを感じた伯爵は、彼女に演技の手ほどきを始めます。彼女は伯爵のおかげで自ら才能を引き出せたのか、売れっ子になるように。

 その後、伯爵は王チャールズ2世(だったっけ…?)に呼び出され、フランスとの外交のため、大使が喜ぶような戯曲を書けと命ぜられます。

 しかし、彼が書いたのは王政批判をふんだんに交えたポルノ小説のようなもの。フランスとの外交は当然のごとくうまくいかず、王にも睨まれるように。

 ちょうどその頃、伯爵は長年の不摂生がたたって梅毒にかかってしまいます。

 ここからがジョニー・デップの真骨頂という感じですね。

 病気のせいで、伯爵は顔中に吹き出物ができ、鼻は崩れ、片目は失明、歩くことすらままならなくなります。

 それどころか、見初めた女優には離れられ、王には無視され、議会の議員からは臆病者とののしられる始末。

 それでも酒を手放せない伯爵がなんとも言えずやりきれない感じです。

 妻は愛しているがゆえに酒を取り上げ、彼の目の前で捨ててしまうのですが、伯爵はどうにもならず泣き崩れてしまいます。

 それを強く抱きしめる妻の愛の深さが素敵でした。誘拐がきっかけで、夫の女好きに何度も裏切られたであろうに、それでもやはり妻は伯爵のことを愛してたんだな……と。

 最後の力を振り絞り、伯爵は議会に出向き、王にとって不都合な法案を演説によって退けて自らの名誉の回復をなしとげたのでした。

 しかし、ついに伯爵も力尽き、妻や母親が見守る中、35歳の若さで亡くなっていく……。

 ここらへんのジョニー・デップが本当に楽しそうなんですよね。

 いや、伯爵自身はどんどん身を持ち崩して破滅へと向かっていくんですが、生き生きと演じているというか…。

 でも、こういう役こそ演じられたら役者冥利に尽きるというものなのでしょうかね?

 しかも、この舞台の”本編”の終わりは凝っていて、芝居が終わるという風に仕立てられています。

 というのも、映画の終盤で、伯爵の一生をモチーフにした芝居が上演されていて大当たりしているという描写が出るのです。

 で、”本編”の終わりで伯爵に見初められた女優が舞台上で幕が下りる口上を高らかに述べて、観客全員が大きな拍手を捧げるというものなんです。

 これって、観客(王も列席してました)が伯爵の生き様に拍手をしているということなんですよね。演出うまいなぁ。本当に。

 さて、私は”本編”の終わりとわざわざ強調しましたが、実はその後にまだ少し続くんです。

 冒頭と同じような状態で伯爵が現れ、「嘘かと思うだろうが本当だ」と述べて去っていきます。

 去り間際に、伯爵は四回「これでも私が好きか?」というのですが、その時のジョニー・デップの表情がすごくいいんですよ!!

 一回目と二回目は挑戦的なのですが、三回目から突然表情がガラリと変わります。言葉は一緒なのですが、不安と哀しみに満ちているというか……。

 放蕩の限りを尽くし、敵を大量に作っても、やはり伯爵も愛されたかったのではないかな?と思いました。

 そして明かりは徐々に暗くなり、酒を飲む動作だけ写して消えていきます。

 以上がリバティーンのあらすじです。

 とても軽い気持ちでは見に行けないタイプです。夏休みにやったら絶対客が入らないタイプ。

 でも、美術や衣装はかなり当時のものを踏襲しているし、彩度を落とした画面が汚れたロンドンや伯爵の人生をうまく表していて良かったです。

 曲も良かったです。

 「ピアノ・クラシック100」か「シネマ・クラシック100」のCDを持っている方は分かると思うのですが、

 その中に収録されている「楽しみを希う心」という映画「ピアノ・レッスン」の曲を作曲したマイケル・ナイマンがリバティーンの作曲もしています。好きなんです。彼の曲。

 さてさて、最後に。この映画は絶対彼氏・彼女と共に行かない方がいいです。見終わった後の話題に困ります(笑)

 今日来ていた観客の中にもいたんですが、彼らはその後どうなったのでしょうかねぇ?

 また、淑女の皆さんも行かれることをおすすめいたしません。どうしても行きたいのなら覚悟を持って行ってください。

 ちなみに「リバティーン」とは「放蕩者」という意味らしいです。

 

 

 

 

 

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